「ただいま、シロちゃん。――あら?」 買い物から帰宅した藍染 桃(旧姓・雛森)は『飼い猫』の肩の辺りを見て声を上げた。小さな、オレンジ色の 「可愛い! ハムスターだわ!」 「いや、どう見てもねずみだろう?」 桃の後ろから、彼女の夫である藍染惣右介が『それ』を見てツッコミを入れる。 「ハムスターでしょ?」 「……そうだね、少し大きいけどハムスターだね」 ハムスターもねずみなんだが、まぁ、気持ちの問題である。ここでまた更に反論しようものなら確実に刹られる。愛する妻との生活は毎日がバトルロイヤルだ。 「シロちゃんは優しい子だから、猫なのにハムスターともお友達になれるのね」 桃に撫でられて目が醒めたのか、飼い猫のシロちゃんこと冬獅郎がその巨体をごろりと転がして起き上がった。ひとつ伸びをして、撫でる飼い主の手を挨拶代わりにかぺろりと舐める。 (いつになったら冬獅郎くんがライオンだって気付いてくれるんだろう) 彼ら夫妻は、元先生と生徒という関係である。恋人になる前から聞いていた『シロちゃん』が桃の嫁入り道具の一つとして家に来た時のショックを僕は一生忘れないだろうと藍染は溜息をついた。 床に落ちたねずみを桃が拾って抱き上げ、 「この子、どうしたの? 一緒に住むの?」 と冬獅郎に訊ねる。冬獅郎はまるでこちらの言葉を理解しているような目で桃を見つめるのだ。――そうだ、と応えるように。 「やめておいた方がいいよ、ねずみなんてふえい」 不衛生だ、とまで言えなかった。冬獅郎が、百獣の王が喉笛を噛み砕かんばかりの眼で睨んでいた。 「藍染先生ったらなんてこと言うの! こんなに可愛い子が汚いわけないじゃない!」 どういう理屈だそれは。 妻とペットに睨まれ凄まれては、大黒柱に為す術はなかった。大黒柱なのに。 かくして可愛いペットが増えた藍染家。 「シロちゃん、おなかすいたでしょ? …そういえばハムスターって何食べるのかしら。苺買ってきたんだけど、食べる?」 一粒摘んで、ねずみに差し出す桃。 (もったいない…高かったのに……) こっそり、眼鏡の下で涙を拭う藍染さんだった。 ねずみは受け取った苺の匂いをふんふんと嗅ぎ、食べれそうだと判断したのかおもむろに実に顔を突っ込むようにして齧り出した。その様があまりに可愛かったもので、桃がころころと笑って見つめている。 「そんなに慌てなくても、まだたくさんあるわよ? 苺が好きなのね…いちごちゃん、かな」 苺まみれになってふたつめに手を伸ばすねずみに、そんな名前が付いたのだった。 微笑む桃の視線の先で、苺まみれのいちごを冬獅郎がべろべろと舐めていた。 真帆さん通称母さん(嘘だ)から頂きました「ねずみーは苺が好きだからいちごと名づけられたんですよ」が発端となりました言 っ て よ か っ た !!(ガッツポーヅ) そんなんでねずみーで描くべきネタはもう一つあるわけですが近いうちに描いてしまいたいと思っております 母さん!母さんありがとー!ノシ 2007/09/28 本当は挿絵が付くはずだったのですが描いてみたところ予想以上に気持ち悪くなったのでネズミーの次ネタ上げるときに一緒に上げたいと思います‥orz |