卑怯は大人は、子供が何をか言おうと口を開くと、一本立てた人差し指あてて黙らせる。
 それから熱い吐息で子供を懐柔して、子供は晴れない想いを抱えたまま男の下に組み敷かれ。
「黒崎‥」
 泣きそうな眼をして見上げる子供に、男も僅かばかりの哀れを湛えて、翡翠色混じった眸で見下ろすのだ。



   人差し指



 雨が‥降っていたからと
 何故だか足が向いたと云った小さな男に、何故だか一護は誘われた。
『黒崎。寂しい思いしてんじゃねぇのか?』
 出した茶を飲みつつの唐突な台詞に、なんのことだろうと、理解できない一護が首を傾げれば。哂う男はベッドから身を乗り出して椅子に座る一護の耳元にねっとりとした息を吐きかけた。
『アッチのほうだよ』
 その吐息と、思わず見つめた、近過ぎる距離の男の眼に、明確すぎる意味を読み取って、何故だか一護は誘いにのったのだ。
「は‥」
 己を責める熱に息がつけない。
「あぅ‥」
 かき混ぜるように抉られた内壁に、一護は喉を仰け反らせた。顕わになった喉仏に男が舌を這わせ、震えるそれに歯牙を立てる。
「あ‥ぁあ‥」
 潰れたように掠れた子供の喘ぎ声は子供ながらなんとも官能的で、男は心の中で詫びた。
 背徳的な快感を子へ植えつけることへではなしに。
 一回、二回で終われそうにはないことを。
 飽かぬ己の喝欲に。
 律動を大きくして、一際高く啼いた子供に、男の劣情はさらに引きずり出された。
「んん‥ん、と‥しろぉ‥」
 欲の泪に濡れた瞳が、甘えるような色を湛えて己を見つめるから
「一護‥」
 思わず呼んだ名前に、ちくりとした痛みを心臓に覚えて、冬獅郎は息苦しさと快楽に眉をしぼるのだ。
 汗に湿る背を抱きこんで、冬獅郎は深く己を一護のなかに打ち込んだ。声にならない媚声を上げて一護は達し、冬獅郎も絡みつくような締め付けに吐精した。
 一護の吐き出した粘り糸引く半透明の精液が、二人の腹を繋ぐ臍の緒のようだと、見下ろす冬獅郎は嗤った。



 子供の口から語られる様々の日常が、己とは随分遠い世界のものだから。
 悔しくって、寂しくって、悲しくって、憎らしくって
 独り占めしたい大人は子供を絡めとる策を模索する。






 2005/10/06 耶斗