似ていた その名を呼ぶとき呼ぶ前呼んだとき 魂が震える 情動ではない感動なんてそんな薄っぺらな限りなく表面に近いものじゃない 底の底、俺を俺足らしめる核の其処から揺さ振りかける強い 力の解放は身を千切らんばかりの苦痛とそれを上回る快楽とを引きずり出して俺を惑わせる、迷わせる どちらに身を委ねれば悦(い)いのかと 苦痛に転べば精神が疲弊する。快楽を選べば溺れ死ぬ。 だからどちらも選ばず狭間で堪える そうして奴は俺を認めて(力量を)、許して(力の行使を) 現れる 氷の龍 顕現したは己の魂 高く啼いた声を聞いたのは俺だけだろう。 喜びは彼のものか己(おれ)のものか 咆哮は大気に轟き大地を揺るがせこの、魂を 引き裂こうとしたか握りつぶそうとしたか天の高みより見下ろせば矮小な、蟲のような存在に操られるを潔しと するほどお前は可愛い奴ではなかろう? されどお前は俺に呼ばれた俺を呼んだ お前が、俺を、選んだのだ お前が、俺に、選ばれたのだ 静謐にしてその本質は獰猛(ねいもう)、騙すに長けた老獪の無垢 暗雲呼びて天蓋い、太陰抱え、支配者然と下界を睨める その孤高と高貴! それが己(おれ)に操られるのだ それが己に従うのだ 高慢にも届く愉悦 喰われるまいと、お前の牙を知っているから俺は踏み耐える。 呑み込まれるまい溺れるまい、流されるまい許すまい 渦を巻くよに荒れ狂う 愛執にも似た渇慾が 己の内側を乾かせ空にし貼りつかせても 俺は踏み耐え恫喝する 虚勢と見らば嗤えばよい それでもお前は踊るから この声に俺の 命 に 最高の恍惚は忘我に至り、奪魂 似ているのだ魂奮わすその感覚が 器から脱け出そうとするような、器を破裂さそうとするような 魂の 高揚が 耐え切れなくなったとき、彼は己がどうなるのかと不安に思う。馬鹿馬鹿しい心細さに嗤ったことも一度二度のことではない。 呼び覚ますのではなく呼び寄せる この行為にさえ昂る意味とは 「‥一護」 日番谷冬獅郎は畏れるように憚るようにそっとその名を口に転がし 胸に眠る氷の龍にその故を訊ねるのだ。 |
2006/03/28 日記 2006/03/19 掲載 耶斗 |