再びワンクッションおかなきゃならない事態に。

陰間とーしろ(大)×死神一護

再び、です。 前回以上にとーしろーの性格破綻してるんですが。
洒落にならない‥っ、本気で洒落にならない‥っ!!
正直奴がとーしろーでならなきゃいけない理由なんてないんです‥っ。
ただ私の趣味なだけで(EEEEEEEEE)

苦情、ドンとこい。(覚悟は決めた)


スクロール pleaz


















 風邪をひいた。間抜けだ‥。
 病気で臥せっているときほど独り身の侘しさが身に沁みる。
 長屋風の宿泊棟の一部屋を借りて住んでいる一護は、仕事着の死覇装もこの日ばかりは脱ぎ捨てて布団に包まり疲れた息を吐いた。
 四番隊から薬は貰ってきたし、食欲はないながらなんとか飯も掻き込んだし、黙って眠っていれば明日の朝は爽快な気分で迎えられるだろう。
 ガンガンと頭の中で鐘を衝かれているような頭痛も薬は徐々に和らげてくれ、それに伴い睡魔もまた一護の身体を倦怠感で包んでいった。




   Carelessness is our greatest Enemy




 人の呼ぶ声と、揺すられる肩の感覚に鬱陶しいなぁと思いながらも已まぬ邪魔に一護は目蓋を開けた。
 薄ぼんやりとした明りを初めに認識する。確か自分が床に入ったのは(というか熱があると隊舎から追い出されたのは)昼を少し過ぎた頃だった。それから四番隊へ寄って、胃につめるものを買って、まっすぐ家へ帰ってきた。
 この明りは‥日暮れ頃か?
 黄昏色の日差しを濾過する障子紙にそう一護は推測した。
 とすると己は余り眠れていないではないか。誰だ邪魔をしたのはと胡乱な視線を動かせば
「起きたか?一護」
 見止めた貌に一護は勢いよく起き上がり、反動で襲ってきた頭痛に頭を抱えて蹲った。
「あ‥ったたたた‥、くっそ‥っ」
「大丈夫かよ?」
 笑いを含んだ声はまさしくあの男だ。一護は痛みに心持ち潤んでいるらしい眼にありったけの力を込めて声のする方を睨みあげた。
 そうすれば確かに男はそこへいて、そのことに少なからず落胆する。幻聴ならばいいと(それもどうかと思うが)期待した。
「なんでお前がここにいるんだよ‥っ!」
 叫んだ自分の声にも頭を割らんばかりの痛みが奔る。左の米神を押さえた手は離せない。右方の男は相変わらず嫌味な笑いに唇を歪めて一護を見下ろしていた。
「あんたの先輩と丁度道端で出くわして、あんたが風邪ひいて寝込んでるから看病してやってくれってさ」
 恨むぜ先輩‥
 どうせ寄こしてくれるならなんで可愛い女の子とか美人の姐さんとかでいいじゃないか!むしろそっちが普通だろう‥っ
 激しく誤解されているらしい不快感に、これはおそらく風邪のためだろうけれど、吐き気さえ込み上げて一護は男――冬獅郎――への苦言さえ億劫になる。
 早く帰ってくれ‥。そして俺を寝かせてくれと、一護は心底から願った。
「あーそーそりゃどーもー。だけど生憎間に合ってっからさっさと帰れコンチクショウ。てめぇ見てると上がんなくていい熱が上がんだよ」
「なんだよ欲情してんのか?病気に罹ったっつーのに元気だなもんだな」
「馬鹿野郎っ、起きてんのもつれーんだよ!下らねぇ冗談かましてねぇでとっとと帰れ!」
 ばさりと布団を被って、完全に男を拒絶する。
 だのに背を向けたそこに胡坐をかいている男の動き出す気配はない。視線が刺さるようで必死になって目を閉じるのに一度剥ぎ取られた睡魔の掛け布は心地好い温もりを戻してはくれなかった。
 布団から覘く後頭部にひやりとする空気を感じる。布団が足りないかもしれない、改めて潜りなおしてみると昨日までは平気(だと思っていた)掛け布団はそう熱を篭らせるほど厚くはなかった。
 もぞもぞと身体を動かして布団を引寄せていれば、軋む畳の音と、不穏な気配に反射的に布団から顔を出す。
「な‥っ、何やってんだお前‥っ!!」
 腰を上げた男は片手を一護の身体の向こうへつき、乗り出した身体は一護の上に被さる形で動きを止めた。不穏な気配は、己におちる影が教えたのだろう。鈍った感覚に一護は内心危機感を募らせる。ただの友人が今のこの行動をとったとしても『向こう側へ行きてぇのかな』とか『自分の様子を見ようとしてんのかな』とそれはそれは相手の親切を前提にして解釈することもできるのだけれど。
 生憎とこの男は友人でもないし、知人と認めるのも癪に障るのだ。
 陰間、職業に偏見も持つつもりはない。けっしてない。働く人間は皆尊い。むしろ身体を張った職種は尊敬さえする。
 だけどこの男だけは別だ。
 何故って、だって、この男は
「何?期待してんの?」
 これまで顔を合わせて己にのりかかろうとしなかったことはないのだ。
 馬鹿かお前はと怒鳴るより早く
「ご明察」
 と至極楽しげに笑んだ男の顔は秀麗なだけに凶悪だった。
 お前俺の状態見えてんのか!!?と風邪が悪化するかもしれない懸念なんて微塵も覚えず布団の中から脱出しようとしたのだけれど。
 身体が半分抜け出したところで捕まえられた。
「ちょ‥っ、阿呆かてめぇ!マジでアホだろバカだろボケーっ!!」
「声でけぇよ隣近所に聞こえるだろ?あ、昼間だから皆仕事かぁ安心して啼けるなぁ一護さん」
「てめ‥っ、気安く俺の名前呼んでんじゃねぇよ!」
「ナニソレ、死神さんって呼んで怒ったのあんたじゃん」
「怒ってねぇよ呼ぶなっていったんだよ大体何時からお前俺の名前知ってんだよ!」
「あんたの先輩が教えてくれた」
 あんのボケナスーーーーーーーーーーっ!!
 もはや目上への礼儀なんて知ったこっちゃない。
 布団へ引き摺り戻されないよう踏ん張るも、矢張り弱った身体では(言い訳じゃない!)健康な男の力に敵わず、肘が畳を擦ったと思えば反転させられ男を見上げていた。
「大体今まで知らなかったってのが可笑しいんだよ。何度ヤってると思ってんだ」
「そのうち無理矢理じゃなかったことがあるか!?ボケ!」
「ひでぇなあ‥、俺は傷付いた死神さんにご奉仕しただけなのに‥」
「ふざけんな!‥っ」
 げほ、咳のために言葉は発される機会を失った。その一瞬の隙をついて(といって正しいのかは知らないけれど。なんでってこの男におよそ遠慮という善意は備わっていないのだ)男は寝ている間に緩んだ襟元へ顔を埋めた。
「ば‥っ、やめ‥」
 風邪が悪化する、とこれは正論のはずだ。一般論だと、当然常識知らずな男だってそれくらいは弁えているだろうと疑わず訴えたのだけれど
「汗かけば治りも早ぇよ」
 暴挙だ。
 叫びすぎ、暴れすぎ、もしかしたら薬のせいかもしれないし(それだったら薬は本来の役目を果たせなくて哀れじゃないか)単純に風邪が悪化したせいかもしれない眩暈に意気は急速に萎えた。
「う‥」
 頭がくらくらする‥。危険なことだと判っているのに抵抗を叶えるなけなしの気力さえ布団に吸い取られていくようだ。身体が重い。
 絶対熱があがってきている、と心なしか水の膜を張る視界に眦も頬も熱さしか感じなかった。
 剥かれていっているのだろう、肌に感じる空気の冷ややかささえ心地好いと覚えるほどには熱は脳を侵しているらしい。