コンと一護の汚れギャグ





 寝苦しさに一護は眼を覚ました。
 薄掛けを腹に掛けただけでもしっとりと肌が汗に濡れている。身体が熱を持っているのが分かる。心臓から、下肢へ。血流の動きが分かるほどには一護は自分が欲情していることを自覚した。
「くそ‥っ、なんでだよ‥」
 生まれてこのかた処理なんてことを一護はしたことがなかった。淡白なことは自認するところだが、直接色欲に繋がらないというだけで昂奮を覚えたことがないわけではないのに、
(おかしい‥)
 今夜は普段と感覚が違っていた。まるで自身がその行為を熟知しているかのように奇妙な引力で一護の手を招いている。帯電したような痺れに、知らず腰の位置をずらした。
(どうするかな‥)
 放っておいて治まらぬものではないだろうが、安らかな眠りにつけるとも思えない。
 かなりの抵抗を感じていた一護だったが、手は無意識に下肢へとのびていた。
(ん‥)
 スウェットの上から指先が触れただけでぞろりとした感触が腰をねめる。思っていたよりもつよい刺激に思わずひるんだが、一度触れてしまえばその甘美感をもっと感じたくて、もう片方の手ものばした。
(ふ‥)
 直に触れば手の熱にペニスが震えた。鼓動が早くなるのが分かる。羞恥にか、理由のない背徳感にか。しかしそれがより昂奮を駆り立てて、一護は自身を擦り上げながら冷静な思考を捨てなければ、と思う。到底理性のあるままでは耐えられない行為だ。
(何か‥、何でもいい‥)
 女の肌でも想像しようかと意識を集中させかけたとき
「一護ー?何やってんだ?」
 能天気な声に、びくりと大きく身体がはねた。
(コン‥。この‥っタイミングの悪ぃときに‥‥ッ)
 机の上で眠っていたはずだ。否、確かに眠っていた。それが何故こんな状態のときに目を覚ますのかと一護は理不尽な怒りに駆られた。
「一護ーー?」
 もぞもぞとぬいぐるみが立ち上がる気配に、一護は先とは違った意味で動悸が乱れた。
 今、一護は窓の方を向いて横たわっている。街灯が彼の肩に落ちているが、ほぼ全体が影に包まれいる。机の位置からではスウェットに両手を入れていても布団がそれを隠してくれる。
(動かなければ‥気付かれない‥っ)
 ここはひたすらに寝たふりだと、一護は息さえひそめてじっとコンの動きを探った。のだが、
「なんだ、一人でヤってたのか」
「‥‥ッ!」
 体重の軽いコンだ。床は軋みもしなければスプリングがその位置を教えてくれることもない。それだからといってもここまで近づかれて気付かないなんて、と一護は不甲斐無さに頭を抱えたくなった。か、生憎両手はズボンの中だ。
 声の主は一護の腹の傍に立っていた。
「お‥っ‥お前‥ッ!」
「別に隠すことねーだろー?男同士じゃねーか。んっもー一護ちゃんてば初なんだ・か・らvまぁ今までは姐さんもいたしなーぁ。溜まってんだろ?遠慮すんな!存分に出しちまえ☆」
 びしぃっと親指を立てるコンに、驚きに仰け反っていた一護は街灯の明かりのもと顔を真っ赤に染めていた。
「な‥、な‥」
 二の句が継げないのも無理はない。一護は殊、性に関する行為に免疫がないばかりかその手の話題さえ苦手意識が働くのだ。
 それを、こうして他人に自慰を目撃されかつ励まされるなんて‥
「なんだよー。オレがいるとできねぇって?繊細すぎるぞお前ー。しっかし大したもんだよ、全然気付かせねーんだもんなー。っで?週にどんくらいの頻度でヤってたの?」
 下世話な台詞に似合う下品な表情のコンに、一護は今が深夜だということを忘れた。
「ヤるかボケェ!!こんなこと今回が初めてだ!身体が勝手に反応してんだよ!仕方ねーだろ!」
 自棄的に吐き出した一護にコンはぽかんと口を開けた。それは一護の台詞の意味を瞬時に理解できなかったためでもあったが、それ以上に自分を睨みつける貌が壮絶な色香をまとっていたからだ。
 不機嫌そうだとしかみえなかった眉間の皺が、今は切なそうだなんて‥。
 しかしコンはそれに気をとられるよりも、ようやくのこと解した一護の台詞に、己の記憶に、一気に血の気を奪われた。
「あん?」
 目に見えて勢いを失くしたコンに一護が不審を覚えないわけがなく。当然何事かと訊ねれば曖昧に笑って誤魔化そうとするコンにいよいよ確信的な不審を感じ取る。
 ぐわしっとコンの頭をわし掴んだ一護は、怒りの形相で
「コンてめぇ!オレの身体に何しやがった!!?」
「お前の身体にって‥っそんな卑猥な‥ッ、俺はお前があっちいってた間ずっとお前の身体に入ってたんだぜ!?そんでオレも男だぜ!?
 溜まるもんは溜まるだろ!!
 一護の怒りに怯えるコンは半泣きの状態で息もつかずに捲くし立てた。
「お前‥‥まさか‥」
「い、いやぁ〜、身体が覚えてるってやっぱあんのねーー‥な〜んて‥」
 失言を自覚したコンは笑って誤魔化そうとしたが、次の瞬間には一護の頭上に振り上げられていた。
滅却しろ!!
「いやああああああああ!!」
 目標は、当然、窓の外。
 割らんばかりの勢いで窓を開け放った一護はコンクリートの道路に力いっぱいコンを叩き落そうとしていた。
「やめてーーーーーッゴメンなさーーーーーいぃ!!
 いーじゃねーかよ男同士なんだからー!!センズリこきあう仲だっているだろーーーーー!?!」
いてたまるかボケェッ!!
 云わなきゃいいのに生来の性格か、余計な一言のためにさらに一護の怒りをあおったコンはそれでも落とされてたまるかと一護の腕にしがみつく。一護は容赦なしに振り落とそうと腕を振る。このときには二人とも現在の時間帯を思い出し、小声での応酬になっていた。
「気にするなって一護!オレだれにも言わねーし!話せる相手もいねーし!俺たち仲間だろ!?これからだってこーゆーことはあるさ!将来思い出してあの頃は若かったな〜なんて笑いの種になるさ!」
「開き直ってんなエロライオン!お前なんか浦原商店に返却したる!あいつんとこで分解されてろ!!」
いっやーーーーーーーッ!!
「うお!?」
 この瞬間コンの叫びがより恐慌をきたしたのは、他ならぬ浦原商店の従業員であるアノ少女によって植え付けられたトラウマが裂けたからである。
 コンの叫びに驚いた一護が思わず身体の動きを止めるとコンはそれまでとは逆に暴れだした。
「な‥っなんだよいきなり‥」
 困惑に一護が握力を緩めれば、コンは一目散に部屋の隅へ走りより、膝を抱えて身体を激しく震わせ始めた。
「なんなんだ‥?」
 目の前でそんな光景を見せられれば、いくら頭に血が上っていたとはいえ冷静さを取り戻す。
 一護はひとつ溜息を落とすと、全身の脱力感に壁に寄りかかった。
 身体の熱は、すっかり冷めていた。





 終

汚いギャグですみません‥。
管理人の汚れ具合がみえるようですね‥ハハ‥(空笑い)
つーか15で未経験って‥そりゃないだろう‥

2005/06/27  耶斗