お前の形が無くなっていくんだと、目を覆って子供は泣いた。 指の隙間を滴り落ちた涙は開いた膝の間に落ちて畳の隙間に吸い込まれる間小さな水溜りになった。 お前の形が無くなっていくんだ。回りから溶け出すように崩れていって元の容を象ってやいない。お前の色は元の場所にあるけれど歪んで滲んで混ざっているんだ。ぎんいろとはだいろとくろとしろしかないんだ。 大丈夫だよと男は言ってやりたかった。しかしながら他人の声など聞いていないように泣くから、子供が言葉を聞き取れるようになるまで男は待とうと決めたのだった。 心配ないよと嘆く子供を慰める用意をしている男は、俺もそうなのだとだいだいとはだいろとくろの子供に教えてあげるつもりなのだった。 ('07/09/30 耶斗) |