[唐突ですが]




 黒崎一護は人間不信だった。
 それはもう限り無くどこまでも果てしなく人間不信だった。
 そんな彼を救った?のは他ならぬ人外の
 霊魂であって、それとは隔す存在の
 死神、だった。



「冬獅郎ーーーーーーーー!!」
「あぁもううぜぇうぜぇうぜぇうぜぇ!!」
 スッパーン!と襖を開け放ちついでに相当痛めつけて現れた人間に自宅でまったりしていた死神は思い切り両耳を塞ぎ拒絶の態度を示したが、人間はまったく頓着せず全身で拒否する背中を思い切り揺さぶった。
「無視してんなよ聞け!俺の話を聞きやがれ!」
「てめぇはどこのジャイアンだ現世ではジャイアニズムの大流行か!」
「いやに現世に精通してんじゃねぇか概ねその通りだ」
「マジかよ!」
「嘘」
 死神が脱力したのは言うまでもない。
「兎に角話を聞いてくれ」
「嫌だ」
「いいから聞いてくれないか」
「嫌だといったら嫌だ」
 てめぇに付き合うと碌なことがねぇと強制的に振り向かざるを得なかった横顔をぷいと逸らせようとしたのだが
「ごふ‥っ」
 て・め・ぇ‥
 悶え畳に打ち伏す結果となったのは人間の拳(彼曰くつっこみ)が見事脇腹にヒットしたからである。
「人が下手に出てるのに‥」
 この上もなく寂しげに呟くが、先の凶行に見舞われた身としては如何にその表情が幼かろうとあどけなかろうと騙されたりはしないのだ。
 だが、ここでさらに反駁してもさらに己の身体が暴力に晒されることを分かっているため死神はかなり渋々ながら突破口が人間に付き合うこと意外にないことを認めることにした。
 分かったよ。渋面で彼は唸り
「言ってみろ。なんだ」
 嬉々と瞳を輝かせた人間に不覚にも怯みながら
「俺はお前のいいところを十言える!」
 なんてのたまった人間に本気で彼の頭を疑った。どこぞで瓦でも降っていたのだろうか‥
「へぇ‥それは‥また‥大層素晴らしいことで‥」
 でもしょうがないから付き合う。
 それじゃあお聞かせ願いましょうか、なんて合いの手なんて入れてみたりもしてあげる。
 その対応に満足したか、にんまりと満面で笑った人間は、死神にとっては不安以外の何物でもなかったが、得意げに口を開いた
「まずはー‥、隊長だろ!」
 それはいいところなのか単なる役職だろ褒めるつもりなら隊長に就任するに至った経緯における努力だとか泪ものの逸話だとか不屈の精神だとか色々掘り起こすべきものはあるんじゃないか?
 思ったけれど、黙っていた。
「次にー、強いだろ!」
 それはいいところなのかもしれないが一つ目に「隊長」というのを持ってきた時点で言うべき殆どの事項を総括してしまったことを露呈したぞ。
 諭してやりたかったけれど、やっぱり黙っておいた。
「次にー、優しい?かな」
 なんで疑問系なんだよ!!
 今までのそして先ほどの暴挙にもやり返さず穏やかに対応している恩を理解していないのかと、思わず拳を振り上げそうになったが寸での所で押し留まり、膝の上で堅く握り締めるだけに留め置いた。
「後はー」
 終り!?既に底を尽きました!!?うっすいな俺!ぺらいな俺!
「格好いい」
 にこー、とだらしないくらい崩れた笑顔に死神は
 あぁもうしょうがねぇなと、この日も毒気を抜かれて懐柔されて
「どーもありがとーございます」
 恭しく頭を下げる死神は、次来る嵐も覚悟せざるを得なくなったのであった。






[このいちごはあたまがよわいのではなかろうか]
千変万化といえば聞こえがよくなくもないが
うちの一護および冬獅郎の変人ぶりは常軌を逸しているようでならない。(今更すぎる)
そこは、愛で、乗り切ってほしいと思います。(暴挙)

2006/07/08  耶斗