色に溢れる世界の中で、色に溢れる君の中で ただ一つ、白い―――― 掌にしがみ付くように広がったそれを何とはなしに見詰めていれば 殴られた。 「んなもん‥、まじまじと見てんじゃねぇよ‥っ」 丁度頭のてっぺんだったために暫らく尾を引く痛みに触れることもできなくて、痛ぇじゃねぇかと睨めば、お前が悪いとそっぽを向かれる。首まで紅い。 もう一度落とした視線の先、反動で傾いていた掌からそれが。伝って落ちた指の狭間の敏感な神経に昂奮する。 「見てんなよ」 「背中に目がついてるのか。便利だな」 「てめ‥っ」 震えた肩に、けれど振り向かない顔に。 焦れる。 顔もみたいし中身もみたいしもっとどろどろしたものも断然綺麗に輝くものもみてみたい。 世界には、溢れた色が煩わしい 人間には溢れる色が疎ましい 魂に、穢されぬ無垢が恨めしい 「たましいだ‥」 「あん?‥っておま‥っ!!」 止めろよ! 焦って掴んだ左の手首は指が余る頼りなさ。そして唇に零れる小さな紅い 「ふざけんなよなぁ‥?お前‥」 怒る気力は呆れに負けるから、一護はその男が行為を続けないよう手を掴んだままがくりと肩を落とした。柔らかだった布団はもう、べとべとに汚れきっている。 手の下の感触に眉を顰めて一護が上目に窺った男は、物思うような表情(かお)をして、忘却を望むような眼して 「お前のだろう?」 最も醜悪で、最も綺麗。 これがお前だと、つと合わされた眸には男が戻っていて。 だから舐めようとするのかよと、 お前の思考を理解するには人間のままの時間じゃ全然足りないと、一護は長嘆しながら閉じた眼に空(くう)を仰いだ。 2006/10/13 耶斗 |