”生物”の”定義”とは? ある日ある授業で先公が軽い調子でのたまった。 『生物なんてものは繁殖を目的としてやがて死ぬものだからね』 なるほど何はなくとも生殖、繁殖、そして最後には死ぬものですか。だけど先生、それは必要十分条件とは云えない。 性欲旺盛でなおかつ消滅する可能性もあるけれど けして繁殖しようとはしない男を知っている。 種についての考察 「何考えてるんだ?」 こんなときに考え事するなんてマナー違反だろうと、拗ねているんだか楽しんでいるんだか(後者ならば十中八九報復を考えている)分からない男の表情は哂っていて、目に慣れた暗夜にその顔を透かし見た一護は今しがた自分が考えていた想念を正直に話そうかどうか迷った。最上の結論はというと男の喜びそうな作り事をいかにも本当らしく言ってやることだが生憎彼はそこまで器用ではなかった。 第一、『何考えているんだ?』はこっちの台詞だ。 凍えた息が降る、冷たく硬い木肌が肌に刺さる、誰に見られるか分からない、(この場合恋次だとか乱菊さんだとか一角だとか、そう仕事帰りで霊体化しているのだ)公園の茂みなんて中に引っ張り込まれたかと思うと唐突に盛っていたらしい男に帯を抜かれ、支えを失くして落ちようとした袴を捕まえる間もなく引きずり出された己のものを咥えられた。 「‥っ、別、に‥お前には、関係、ね」 「可愛くねぇの」 「ぃあ‥っ」 歯を立てるな、とこの行為自体を止めさせることはとうに諦めてしまった一護はせめての抵抗に男、冬獅郎の髪を集めて握り締める。執拗に舌を絡められ射精の欲求は強くなっているのにまだ、まだと冬獅郎は解放を許さない。 乾いた空気を浅く吸い込む喉が枯れた音を立てる。鳥肌の立つ空の下、それでもしっとりと肌は汗ばんでいた。 この男はいつでもどこでもお構いなしに盛っては己(おれ)を巻き込む。 いい迷惑だと震える膝をなんとか支えながら腰を曲げ快楽を散じようと意識を逸らす。それでも男の響かす粘着質の水音と、間近に吹きかけられる熱い吐息と、生々しい衣擦れとが追うのを已めず一護を追い詰める。 最初に抱かれたのは何時だったっけ? なんだか出会いがしらに部屋へ連れ込まれたような記憶がある。 そうだ、男は俺をみるなり炯々と光る獣の眼して、そうしてそれを隠しもせずに―――― 挙句好き勝手やってくれた後に『お前が悪い』なんて云いやがったのだ。 責任転嫁かこのやろうとかなりなところ頭にきたが、どうやら怒髪天超えて頭が空になってしまったらしい、呆然と言葉の意味を探してた。 気持ちよかったとか痛かったとか全然全く覚えてない。そんなものは後から刷り込まれたもので、あの時は兎に角訳が分からなくて、何より動けない自分自身の理由(わけ)が分からなかった。 今も、その理由は解明されていない。 血の集中する一点が酷く熱い。そこからまた下肢を蕩けさせるような熱がじくじくと広がって足裏も痺れて立っていられない。これが女相手だとかなり情けない現象だが初めのうちはこうじゃなかった。回を重ねるうちどうやら、認め難いことだが、男の技に慣れてしまったらしい。こんな慣れ方、大変不本意だ。 「も‥、とうしろっ」 いい加減、いい加減に、だ。本当にこの男はしつこいのだから。唇から抜かれる度唾液に濡れた皮膚が冷やされて悪寒とも甘美感とも知れないものが腰を駆け上る。目も開けてられない。自分の性器を男に舐めまわされるのを見てられないというのもあるが、目の周りの熱さに涙が滲んで痛いのだ。それなのにその上さらに男は泣きたい気分にさせてくる。己を見上げた男の目が 「‥っ、頼む‥っから‥!」 教え込んだ言葉を強要する。云わなきゃこのまま尿道締められて終いなのは回数こなしてる分学習している。 「イか‥せて‥」 あぁ、こんな声は嫌だなぁと泣いてるのか喘いでるのか、縋ってる弱い声は嫌いなのだけれど解放が約束されてる期待感も助けて割かしそれっぽく出る。 それで冬獅郎は一際強く一護を擦り上げ、一護の吐き出すそれを全て飲み干すのだ。 弛緩した身体を幹に凭せ、そのままずるずると根元に尻をつけば袴には足首を突っ込んだだけの半端な格好になった。億劫ながら、立てた両膝の間に上衣をたくしいれて隠そうとすれば宣言なく膝を割り開かれた。 「‥っな、にす‥」 「隠すなよ。見えねぇだろ」 見なくていい!と散々見た癖にまだ辱めようとする男に一護が抵抗を示せば首筋に舌を這わされ前を隠す手が震えた。 「ちょ‥っ、も、いいだろ‥っ」 膝を押さえる手の力は強い。掌の小ささとその硬さが似つかわしくなくて、毎度のことながら戸惑う。こうして直に触れられないときは意識にも上らないのに。 「離せよ。どうせ今から挿れるんだ、同じことだろう」 「なに‥っ」 耳元へ囁かれた言葉に、ここでするつもりかと怒鳴れば、今更だろうと哂われる。 『許したお前が悪い』 また俺が悪いのか。 何故なんだと唖然とすればその隙に身体をひっくり返され、一護は木にしがみつき、冬獅郎へ腰を突き出す形になった。 「な、や、やだ‥っ、マジこんなとこでやんのヤダって‥っぅああ!」 「きつ‥まだ慣れねぇのか‥」 呆れた様な声に怒りは湧くも痛みをやり過ごすことに神経を使ってそちらまで消化できない。 「いきなり‥つっこんで‥そりゃねぇだろ‥っ」 「そろそろテメェで濡れるようになれよ」 そりゃ無理な話だ。尻の穴の異物感は相当なものだ。大体なんだって手前相手に濡れなきゃならない。 「ぅ、ぁ、あ、んん、ぁ、ぃ」 その上待ってもくれないのか。男の非道ぶりに涙が出る。 別に、優しくされても気持ち悪いのだけど。 「今夜は‥っ、このまま、何回イけるかやってみるか?」 「‥最、低‥っ」 至極楽しそうな男の声に、正直な感想が零れ出た。 あめぞさんへ生誕お祝い。 なってないという話。 2006/02/06 耶斗 |