寂寞として






 もし君にあの転機が訪れなかったならば
 もし君に霊をみる力がなかったならば
 もし君に産まれついての稀有な髪色がなければ

 君の掛け値なしの放埓な笑顔が見たいと望む度歴史のIfを考えるけれど、どれかひとつでも欠いていたならば出会うことなどなかっただろう必然の道程を僕は憂えばいいのか歓べばいいのか分からないのです。

 そんな顔をしなくてもいいのにと、忘れてしまいそうな君の幼さを僕は想う。
 君の瞳に決意と共にある悲しみの光を僕は見逃すことなど出来ない。
 斬り捨てることに敵も味方もないと君はいずれ気付くだろう。
 置いていくことが非情なら、連れていくことは高慢なのだと、君はいずれ知るだろう。

 固く握った拳は打ち崩すばかりで誰かの手を引くことも出来なければ種を蒔くこともできない。
 鞘の無い刀を負う君よ、心の守り方は知っていますか。

 幼さゆえの素直さはけして君を守る鎧にはならない。
 素直さゆえに求める潔癖さは君を殺す刃となるだろう。
 道に迷っている君よ。広すぎる世界に道はないのだ。
 振り返っても引き返さない君の信念を、僕はやはり少しだけ残念に思う。
 立ち行かなくなった足を無理やりに踏み出す君の健気さを、僕は愚かと嘆くだろう。

 手を差し出すことを許さないなら、せめて君のために泣くことを許して欲しい。










('09/05/28  耶斗)