黒崎一護という人間の、あれほどまでに死への観念が薄いことが不可思議だ。 日番谷冬獅郎という魂の、あれほどまでに存在への執着の稀薄さが気がかりだ。 よく、君達は似ているねといわれた。 髪の色も肌の色も、背格好も外見年齢も全く違う、似通っているというのならそれは他を威嚇して止まない目つきだけだったろう。それでいて懐に招き入れれば温かく見守る眼差しだったろう。 よく、君達は似ているねと肴にされた。 「一体俺たちの何が似ているっていうんですか」 心外だとでもいいたげな声に振り向いて、白髪の死神は柔らかに微笑んだ。橙色の髪した子供がそういった表情に弱いことを知っている。あの子もこういった笑い方を憶えればいいのにと悪戯事のように思った。 「君達の、在り方が似ているよ」 「俺は人間だし、あいつは死神でしょう。在り方なんて全然違いますよ」 「君は君を死神だといっていたじゃないか」 「それは‥、そうですけど‥」 反論を探しあぐねている姿に頬が綻ぶ。まだ甘い。まだまだ甘い。 彼はこんなに子供だよ? 「俺には、君がどうして彼に対して反発するのか、そちらの方が分からないね」 「反発してるわけじゃありません‥!」 反発は、相手を意識するからこその衝動だ。意識などしていないと主張する子供は、だから反発もしていないと言い張るしかなかった。 「俺は‥、俺は、ただ‥」 「ただ?」 「ただ‥」 歌のようだと白髪の死神は思う。彼が住まう庵は湖のうえにあり、水面を浚う風の匂い、揺れ寄せる水の音楽、それらはすべて詩のようだと死神は思う。世界は詩でできており、そこに住む我等は唄の体現なのだと。我等を構成するものは韻律なのだと。 「兎に角、俺は、あいつとは似ていません」 「では、誰となら似ていると?」 「‥揚げ足をとらないでくださいよ」 困ったように笑った子供は、子供らしからぬ表情(かお)をして。白髪の死神は子供というものはあっという間に大人になってしまうのだと再認する。 訂正だ。早くしないと、いよいよもって君の手では捕まえられなくなるよ 「日番谷隊長に会っていったらどうだい?」 「勘弁してくださいよ、浮竹さん」 どうしてそう俺たちを引き合わせたがるんですか。 ただの笑い話にして忘れたがっている子供に、君たちが似ているからだよという返答が余りに意地が悪く、効果的であるが故に無意味なことを知っているから 「俺は、君達が好きなのさ」 嘘ではないからそんな言葉で、濁す。 |