04.甘




ベッド脇に引きずってきた椅子に座るスネイプはルーピンに背を向けてはいるが、今も片手は差し渡したまま。
手だけを冷たい空気に晒しているルーピンはその背を見つめて嬉しげに微笑んでいる。


「君は‥」
半ば囁くようなルーピンの声は深閑とした暗がりに優しく反響して。
スネイプは振り向いた。
「君は、僕に甘すぎやしないかい?」
苦笑する、けれどやはり嬉しそうなルーピンはわずか、握る手に力を籠めた。その寄せた眉が不安げだと何故だか胸がざわついてスネイプも戸惑うようにだけれど、緩く握り返す。
「貴様のご立派な友人らほどではない。」
素っ気無く顔をそむけてみせながら。


ほら、差し出しされたスネイプの掌にのっているものを見てルーピンは首を捻った。押し付けるように渡されたのは蛙型の
「チョコ?」
「貴様はいつも甘い匂いを撒き散らしている。――迷惑ではあるが、それがないと実に落ち着かん。かといって我輩は甘いものを好まんのでな。貴様に食わせるのが一番いい。
誤解のないよういっておくが、我輩をそうさせたのは貴様であって、その責任を貴様にとらせるだけなのだからな。」
見えぬ貌は若干早口にそれだけ云って、ちらりとも表情をうかがわせてはくれないけれど、鉄面皮も耳にまではとどかなかったとみえる。

くすりとルーピンは口元を緩めて
「雄弁な君も好きだと思えるのはこんなときだね」
ありがたく、と云う風に丁寧に包み紙を剥がした。












2004.Winter  耶斗