ある日、愛しのイルカ先生が泣いていた。 子供たちの演習を終えて、もはや我が家といえるほどに通い詰め ている愛し君の部屋を訪れると、部屋の真ん中に座り込んで子供 のように縮こまって泣いている当の本人を見つけた。 どうしたの? 己の知りうる限りの持ちうる限りの、おそらくは優しさというも ので肩に手をのばせば 触らないでください 叩かれた。 どうしたの?何を泣いているの わけも勝手も分からずにただ眉を垂れさせれば あんたのせいです。何故だか分からないけどあんたのせいだとい うことだけは分かります。 あんたのせいで俺はこんなに苦しいんだ。 ひくりひくりとしゃくりあげながら背を向けたまま、また頭をこ んがらせることを云ってくれる。 何が苦しいの、俺が何かしたの 何所が苦しいの 胃が、いいえ胸が。 絞られるようで苦しいんです。 きゅうきゅうと俺を苛むんです。 呆けるという状態はきっと今この時のことをいうのだ。 らしくもなく開いた口が塞がらなくて、ただ目の前の人間を見つ めているなんて イルカ先生? 何ですか 拗ねているような、怒っているような あぁけれどなんて甘美な声だろう あんたのそれね、きっとビョウキ ようやく振り向いた顔は理解できない言語を聞いた者の貌で それとあいまった己の得た答に頬が緩むのを止められない。 それでね、そのビョウキ、きっと絶対俺にしか治せない。 治すというよりも緩和だけれども だからね?センセ、早い話 アンタもようやく俺の愛を受け止めたということですよ。 幸せになりましょうね あんぐりと口を開けたままの困惑顔を最高の笑みで抱きしめた。 終 日記でかいた小話。 20041224 耶斗 |