日記ss救済 といっても全てではなく。比較的完結しているもので短いのを寄 せ集め。 ---------------------------------------------------------- 2004/12/13 いつからだったか、この身は鎖を纏っている。 腕をあげればしゃらりと鳴る。身体を地に縫いとめようとでもす るかのような重量はそれが太くあるようで、けれど耳に透る澄ん だ空気はそれを細くあらしめるようで。 結局のところ事実それがそこにあるということはないのだけれど。 たとえば名前 彼が己が名を呼んだとき、くんと引かれる様にいかなる場合も己 は彼を振り向くし ――それはやはり鎖を引かれたような感覚で 振り返った俺にその目が和んだなら俺の目は彼から放せぬし ――それは鎖を固定されたような 用はなんだと問うた俺に、曖昧な応えで俯いたなら俺はその顔を のぞかずにはおれないし ――それは鎖を手繰られるような そうだ詰まるところこの身に鎖の捲きついている状態は見受けら れないのだけれど。 けれど確かに彼は俺に鎖を捲いてそれを所有する。 そうでなければ何故俺が彼などに気を持つものか。 ---------------------------------------------------------- 2004/12/08 「ナルト、危ないぞ」 サスケ追跡チームの一員であるネジは同じく班員のナルトの腰を 引き寄せた。ナルトの足が運ばれていたであろうそこには鈍く光 るワイヤが。罠だ。 「まったく‥。気をつけろといっただろう」 軽く溜息をつきながら呆れたというように目を伏せる。 「‥ッ分かってるってばよ!よけようと思ってたってばッ」 未だ己の腰を抱いたままの男を見上げて腕をふりあげる。 「心配だな」 意地悪気に哂うネジにむぅっとナルトがふくれてみせたところに 「お前は俺の隣歩いとけナルト」 ぐいとナルトの肩を引く者があった。 「シカマル。隊長がこんな後ろにいていいのか?」 ネジが目を眇めれば 「後方の警戒を頼まれてくれたわりには随分と前にでてんじゃね ぇの?」 シカマルが皮肉に哂ってみせる。 「‥‥‥‥おい、お前あれなんとかしろよ」 幼馴染だろ 「シカマルは頭いいけど熱くなると周りが見えなくなるんだ」 勿論耳も聞こえなくなる。 「先‥急ぐんじゃねぇのかよ‥」 先に進んでいた2人と1匹は振り返った先で繰り広げられる静か な戦いに割り込むこともできずただただ溜息をついていた。 ---------------------------------------------------------- 2004/12/05 じゃらりと右手首の鎖が啼いた。 格子模様に切られた空は青く、碧く、どこまでも深く。 だのに古臭い木の匂いのこもる部屋の中は暗く、昏く。 焦がれても仕方がないのだ。求めても当然なのだ。 「ネジぃ、外にいきたい‥」 陽の光をあびたい、風の匂いをかぎたい、茂る青い草草に触れた い。 「ネジぃ‥」 なんで応えを返してくれない。 喉が痛くなるほどに仰がなければみえない窓は小さく、錆に赤茶 に染まる鉄格子。背をあずけるのは太い角材を組んだ四寸角の格 子。 未だ幼い彼の皮膚はささくれた木肌に布をとおして刺されながら 意に介した風もない。頭を格子の穴に押し付けるようにのせなが ら一心に空を求める。やせ細った腕はもはや持ち上げることかな わず。投げ出した脚もまた同様、ぴくりとさえ動かない。 ねじぃ 虚ろな瞳はけれど空をそのままきって嵌め込んだかのように碧く。 影に沈む箱のなか煌めいてみえた。 |