触 「男」というものになったらしいネジはよく触れてくるように なった、とナルトは思う。 以前は得手としなかったスキンシップを彼は自ずから仕掛ける ようになった。 己もそれが厭わしくは無かったし、戯れの延長上にあるものだ と考えていたから問題だなどとは思わなかった。 道の向こうに見とめれば、擦れ違いざま、頬を、鼻を指の腹で 挟んでいく。額を指の背で小突いていく、髪を掻き撫ぜていく。 それは兄のようで、親しい友のようで。心地のよいものだから 彼が通り過ぎた後、俺はくすぐったいような笑いに頬の筋肉が 溶けるのだ。 やがていつからか誰よりも近しい場所に立つようになって、ス キンシップも形を変えた。 触れていた手は指はそのままに、それに付随する唇が、軽く己 を食んでいく。 己はやはり、自身らの関係からそれはしごく自然なことなのだ と解釈して、なにも云わずに好きにさせる。 眼が合えば傍により、出くわせば眼を合わせ。言葉無く触れ合 っては離れていく。 目蓋に触れれば薄い皮膚を食み、頬に触れれば肉を食み、唇に 触れるなら吸いとるように食んでゆく。そうして必ず離れる間 際、己の熱が移っただろうかと確かめるように指の腹で撫ぜて ゆく。 別れてそれから、やっぱり俺は笑うのだ。 ある日一人の友人が、ナルトにひとつ訊いてみた。 「お前等処構わずイチャつくけどよ。羞恥っつーか遠慮なんて ものはもってねぇわけ?」 それにことりと首を傾げて、彼はこの上もなく不思議そうに応 えたのだ。 「ネジはTPO考える奴だし。何か問題あるってばよ?」 訊ねた友人はその答えに馬鹿馬鹿しいと首をふり、ご馳走様と 手を振りながらさっさと道の先へ消えていった。 なんだか分からないナルトはひとり道の真ん中に取り残されて、 やっぱり首を捻るのだった。 終 兄さんにも支配欲が生まれました。 第二部開始で頭わいてました。 1/31の日記より 2005/02/11 耶斗 |