「ネジ、何をみてる」
訊いていながら咎めるような響きに、ネジは樹上、幹に背を預
け閉じていた目蓋をうっすらと開けた。
「見るも何も、目を閉じていたのが分からなかったか?」
嘲笑ともとられかねない薄い笑いを口元に表せば、先に問うた
隣の枝の男は顔を顰めて応えた。
「じゃあ云い方変えるよ。何考えてた?」
「‥考えていたのともまた違うな‥。」
思い出していた。
たっぷりと間をとってから紡がれた言葉に、男はますます眉間
の皺を深くした。
「こんなときに感傷なんて舐めてたら不意打ちくらうぜ。」
これ以上言葉を交わしても己の機嫌が降下するだけだと判断し
たのだろう男は応えもまたずに枝を移った。
こんなとき。こんなとき、ね。
「そうは云っても、意図してのことじゃあないのだから」
男は自嘲に唇を歪めて、明けの太陽を待つため再び目蓋を下ろ
した。

この地の任務が終われば実に3ヶ月ぶりの帰郷である。点々と
地を移りながらの任務。人手不足は未だ変わらないらしい。た
とえ帰還したところで任地へのとんぼ返りは予想できる。それ
でも里に帰ることをネジは切に願っていた。出来ることなら一
つの任務が終わるたびに帰りたかったが、そうもいかぬため2
つ3つの任務を終わらせての帰郷が常となっていた。それでも
面倒くさいからという理由で半年を過ぎても帰ろうとしない者
もいるのだけれど。


里に帰らねばならぬ。
いつ帰るともしれぬあいつを出迎えるために。

修行をして強くなって帰ってくると、黄金色の子供が里を出て
から3年が経とうとしていた。






 終

第二部開始読む前に殴り書き。
なのでホントは3年ではなく2年とかそこらにしとかなきゃいけ
なかった‥(直せよ)
1/31の日記より

2005/02/11  耶斗