驚きにただ見開くだけの目に、不自然なほど優しく笑んで、
両腕で支えている上体を屈めた。




   青少年鎮静剤




重力にならって零れた黒髪が三橋の目元に落ち、反射的に目
蓋がおりた刹那、榛名の下唇が三橋の唇の間にそっと挟みこ
まれた。
三橋の視界は、ぼやけた榛名の影と、その後ろの眩しいだけ
の白い蛍光灯の光だけに支配され、次いで、触れ合わせるだ
けで、ふっと離れた唇を訳がわからないという目で見つめた。
と、ふいにその唇が歪められ
「抵抗しねぇの?」
嗤った。
それは熱した火箸のごとく、三橋を覚醒させるに十分で。跳
ね上がった腕はそのまま榛名の肩を押しのけようと上がった
が、手首を押さえられ床の上に縫いとめられた。
「は るなさ‥っ、はるな さん‥っ?」
喉の閊えがとれたようにあふれ出した声は震えていて、寄せ
られた眉と縋るような目に榛名は喉をならして、線の細い三
橋の首の付け根に歯を立てた。
「い‥た、痛い‥、はる なさ‥っ」
三橋の訴えるとおり痕を刻み付けようとするかのように強く
噛んで。
「痛い‥ッ」
三橋の目に涙が揺らめき、零れても榛名は皮膚が裂け血を滲
ませるまで力を緩めなかった。


「はるなさ‥榛名 さ‥」
ひくり、と喉を引きつらせて喘ぐ三橋の、榛名の貸したTシャ
ツをめくり上げて露になった肌理の細かい肌に喰らいつくよ
うに唇を、舌を滑らせていく。
榛名さん、榛名さんと制止に連ねられる己の名前も、もはや
なんの意味もなく
榛名はぺろり、と胸の突起を舐めると身体をずらし己が名を
紡ぎ続ける泣き声を封じるように唇を合わせ、舌を滑り込ま
せた。
歯列を割って、逃げる舌を追いかけ無理やりに絡ませて、た
っぷりと唾液をそそぎこみ、ようやく己の手を押し返そうと
する腕の力が抜ける頃、銀糸を引きながら唇を離した。

焦点のあわないぼんやりとした瞳を彷徨わす三橋に再度軽く
音を立ててキスを落とし、拘束していた手を脇腹に滑らせた。
びくりと震えた身体を、片肘で支える身体で押さえつけてそ
の手を下着の中に差し込み育ちかけのそれを握りこんだ。
途端、力の抜けていた手が榛名の肩を押したが、榛名は覆い
被さったまま肩口に埋めていた顔を上げ、耳の裏に吸い付い
た。
「う‥ぁ、はる なさ‥やめ‥」
握りこんだそれを上下にしごき、身体を支えていた腕を三橋
の腰に回し、ズボンをずり下げる。冷えた空気に身体を震わ
せ足を閉じようとしたけれども、間に差し込んだ足と自身を
握りこむ腕に阻まれ叶わず、その動きに助けられたように脚
はズボンから引き抜かれた。

そのうちに刺激を与えられる三橋自身は勃ち上がり、とろり
とろりと白い液をこぼし始める。それを塗りこめるように先
端を弄りながら、裏筋に指を這わす。
「は、はるな さん、やめて‥やめて ください‥」
ほろほろと涙をこぼしながら、肩口に埋まる榛名の頭を離そ
うと、榛名の肩を押す手はきつく服をつかんでいて、押して
いるというよりも縋りついていると云ったほうが相応しい。
無言で追い上げる手が、一際膨らんだ三橋自身に限界を悟り
「はるなさ‥だめ、手を‥ッ」
放して、と啼いた三橋の耳に舌を差し込んで、同時に放たれ
た白く、熱い飛沫を受け止めた。


三橋の乱れた息を整えさせる暇をあたえず、榛名は濡れた指
を後孔に這わせる。
滑りに助けられ、つぷりと一本を差し込んだ。
持ち上がらないほどに力をなくした頭は、床の上で仰け反る
だけで
「な に‥?はるな さ」
目に湛えた涙に己が揺らめいているの見て、乾いていた自分
の唇をなめた。
「ここに、さ」
抽れるから
その声はひどく喉の粘膜を引っかいて、音になったのは掠れ
ていた。どこか自分のものでなく感じるその声に苦笑する。
「お前の中に‥抽れてぇ」
「ひ、あ、はるな さん‥っ」
2本目の指も入れて、きつく締め付ける筋肉を解そうとゆるゆ
ると抜き差しを繰り返す。途中孔を広げるように内壁を引っ
かいたりもしながら。
「レン‥」
軽い音をたてて、頬、目蓋に、唇に口付ける。
指はもう3本飲み込まれていて
「力、抜けよ?」
息を吐くのと同時に全ての指を引き抜いて、三橋がのんだ息
を吐き出す前に、自身を突き入れた。
「う‥い、痛‥っ」
苦しげに呻く頭を片腕に包んで抱き寄せる。そうして軽く突
き上げながら半分ほどしか埋まらなかった自身を奥まで。
「ほら、レン。息止めてねぇで吐いて‥」
痛いほどに強い圧迫感に少し眉を顰めながら、三橋の髪を梳
いて口付けを繰り返す。
榛名の言葉に従うしかない三橋はひ、ひっと泣きじゃくるよ
うにしながら必死に短い息を吐いた。
やがて全てを収め終え、榛名も詰めていた息を吐いた。
三橋が雄の違和感に慣れるのを食むようなキスで待ちながら、
自身を責める力が緩んだのをみとめて三橋の頭に回していた
腕を腰に宛がうと、ゆっくりと自身をギリギリまで引き抜き、
また一気に突き入れた。
三橋は引き攣った声をあげたが、それに行為を止めることは
なく。大きく出し入れを繰り返す。揺さぶられるままにがく
がくと揺れていた三橋は榛名の首に腕を回し、縋るように抱
きついて背を上る痺れに、白濁していく意識に己が身を投げ
出した。


「はるなさ‥はるな、さ‥」
うわごとのようにその名だけを呼び続けて、その持ち主だけ
を求め続けて。
やがて全身を襲った大きな波に、身体を震わせ弛緩したが、
中の榛名は達しておらず過敏な内壁を擦る。
「ん、も‥だめ、まって‥」
か細い声が訴えるけれども、酷い男はキスを落として、あと
ちょいだからと自身を大きく引き抜いて、奥まで突き入れ、
その後細かく振動した。
「ふ‥んぅ‥」
己の内にたっぷりと吐き出された熱にぶるりと身を震わせて、
今度こそ腕の力を失い床に落ちる。
それを上から見下ろしていた榛名だったが、やおら覆いかぶ
さると深いキスを仕掛けた。
抵抗する気力もなくされるがままに享受していれば、収めら
れたままの雄がまた内壁を押し広げ始めたのを感じた。
「は、はるな さ‥!?」
驚いて、キスから逃れ男を見上げると、参った、と云う風に
嗤う貌。
「もっかい、な?」
質問の形になっていない言葉に、三橋が開いたままの口から
言葉を発する前にピストン運動を始めた。

「や‥はるなさ‥無理‥」
重く床に寝ていた腕を無理やりにあげて阻止しようとするけ
れども、なんなくいなされて、三橋は長い夜の訪れを悟った
のだった。






  終




ギャグ?

冒頭の部分「夕暮れ純情」に書いてたのですが私にエロはム
リダヨッ!と逃げたのでした。
でまぁ半分まで書いてたんで捨てんのももったいないかな、
と(貧乏性)掬ってみたわけです‥。
エロ修行したらいつか下げると思われ‥


 20040919  耶斗