01.踏み切り

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線路を挟んだ踏切の向こう、見つけた姿は実に偶然。
踏切があがったら声をかけようかと考えていると、もう一
人、知った顔が近づいて、
何事か話し掛けて、話しかけられたその人物が身体の向き
を変えようとしたところを電車が遮った。
何両も連なったそれが遠く過ぎる頃には二つの頭はなくな
っていて。
何故だか感じるやりきれなさに彼は暫くその場を動けずに
いた。








練習後の部室で、椅子に腰掛けている榛名は呆けた頭を壁
に預けている。そこにバッテリーを組んでいる捕手こと秋
丸がバッグを肩にかけながら声をかけた。
「榛名、いつまでいんだよ。もう鍵閉めるって言ってるぞ。」
親指で戸締り前の確認をしているらしい人間を指した。
それに、あーと気のない返事を返してのろのろと立ち上が
る。
「本当に大丈夫か?その調子じゃさっきの連絡も聞いてな
かっただろ。」
さっき?さっきって何かあったか?
ちろりと見やった榛名の目に彼の云いたいことを悟ったの
だろう。深々と長嘆を溢して言った。
「明日の練習は休みだよ。」
台風が来てるからな。
それだけ言って踵を返すとさっさとドアをくぐってしまっ
た。


残された榛名は『鍵閉めるぞー』とドアを押さえているチ
ームメイトにおう、と応えて先の秋丸に倣った。








線路を挟んで降りた踏み切りの向こうに向かい合って立つ
ような、そんなキョリが

今のキョリ











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