04.飛べない翼

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「調子が戻ったかと思えば今度は一変して黄昏んのかよ。」
もはや諦めたような秋丸の声に振り向けば、茜色に染まる
教室のなか、すでに2人だけになっていた。
台風は雲もつれていき、空を広くした。
窓際の1席に座り頬杖をついてその紅を眺めていた榛名は、
傍らにたつ秋丸を見上げて云った。
「なに、練習?」
「とっくに始まってる。」
この格好みてわかんねぇ?
なるほど確かにユニフォームを着ちゃいるが、お前が着る
とナチュラルすぎて普段着にも見えんだよ。
「そーだった。そーだった。」
ほんじゃあ今から行きますか。
席をたちながら背伸びをして、紅の呪縛を振り切った。
背を向けた窓、二度と振り返ることはなく、床においてあ
ったバッグを取り上げ肩にかける。
振り返れば、その紅をみれば
再び捕えられることなど目に見えている。


なんたって高校球児ですから。
そうそう休んでもいられない。
「練習、練習〜」
「あ?おい、待てよ〜」


榛名の眺めていた窓の向こうを、何とはなしに眺めていた
秋丸も榛名の声に慌てて後に続いた。




紅い 空、茜空。
後ろ髪を引くような名残惜しさに肩甲骨の辺りが疼いた。













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