05.まどろみの午後

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天気のいい日、昼飯は青空の下で食べるのがなによりだ。
そう自論を掲げる榛名は屋上、フェンスに凭れて市販のパ
ンにかぶり付いている。
その隣では、彼の友人であり捕手である秋丸が同じくフェ
ンスに背を預けて弁当を広げている。
「なぁ〜榛名さぁ」
何でもないように言ったらしいが、その声は云いにくいこ
とを言おうとしているもののそれであると分かるもので。
だから榛名は器用に片眉だけを上げた目だけを秋丸に向け
た。


秋丸は弁当をつつきながら榛名を見ずに話す。
「なんか悩み事とか‥あんの?」
「あ?」
「や、ないならないに越したことはないんだけどさ。」
最近感情の起伏激しいから。


どうやら心配されているらしい。
榛名は驚きに瞠目して顔を秋丸に向けた。
それにはやはり気付いていない秋丸は弁当に視線をおとし
たまま
「踏ん切りつけんのは‥大事だぜ?」


ついでに見抜かれているらしい。
あな恐ろしや相棒の観察眼。


「あぁ‥」
呆気にとられているいうことを隠しもしない声が喉の奥か
らもれた。
あまりの天気の良さに午後はこのままふけてしまおうかと
考えていた榛名は、うつらうつらと下がり気味だった己の
目蓋と意識がすっかり覚醒しているのに、まどろみの午後
を諦めた。













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