少年の子供時代を共に生きた恩師は放課後の教室で彼を見つけた。
「お前を必要としている人間ならいくらだっているだろう?」
 二言三言言葉を交わした後、彼の恩師はそう諭すように優しく云ってくれたけれど、少年はそれに十分な答を与えられないことを知っていたから悲しい気持ちになった。
「ちがうんだってば。オレは、オレだけを、差し引きなしに必要としてくれる奴が欲しいんだってばよ」
「? 良く分からないな」
「なにが?」
「それが何故ネジでなくてはいけないんだ?」
「 え ? 」
「お前に好意を寄せて
 お前を欲しいと望んでいる人間は多くいるのに、
 何故お前は”それ”をネジに求めるんだ?」


「‥‥‥」


 曖昧に笑って

 回答拒否


 懐かしの教室の窓から、逃げるように飛び降りた。