眠たげな目の上忍師は木の上に寝そべって、マスクで隠したあくびをさらに愛読書で隠しながら少年へ声をかけた。
「もう追いかけるのはやめなさいよ。
 近くの幸せで満足してりゃあいいじゃないの。
 お前はそれでも十分に幸せになれるよ」
「駄目だってばよ。
 それで幸せになんてなれるわけないってば。
 俺はアイツでないと駄目なんだ」
「どうしてよ」
「アイツがアイツだからだってばよ」
「お前が
 ネジを
 好きだからじゃないの?」


「‥‥‥‥‥‥‥違ぇよ」


 青年になった少年は拗ねたように唇を尖らせてちょっとだけ考えこんだ後、まるで子供の顔で笑って、ぱたぱたと通りを小走りに去っていった。

 上忍師、溜息ひとつ。