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山の中、小枝の折れる音を足下に里の長になった青年と旧来の友人の一人が歩き回っている。落し物でも探すように屈めた背は丈の高い草に隠れがちだ。
「おいキバ、お前の鼻バカになってんじゃねぇの?」
「フザケロてめぇ。オレのプライドにかけてそれは無ぇ」
「あーそー」
「信じてねぇだるぉ(巻き舌)!」
「でもまだ見つかんねぇじゃん」
「うっせーー」
「まだ‥大丈夫だと思うんだけど‥」
「お前‥っ!?」
弾かれたようにキバが顔をあげ、ナルトを振り返ったけれど。目の前の青年はきょとんとした目でキバを見つめ返した。
「なんだよ?」
「‥‥‥いや‥」
気づいたんじゃないのか
「あーそーだオメー」
思わず眉を顰めたくなるような能天気な声に、事実キバは再び足下の先に向けた顔を歪めた。
「ヒナタと結婚決まったんだって?
オメデトサン」
「――――オ‥ゥ‥」
考えるよりも簡単になったはずの、跳ねた心臓の戻し方をその時彼は忘れてしまった。
ふたたび振り向いた顔も、目の前の無邪気な笑顔に毒気を抜かれでもしたか、呆けたような貌になってしまった。
落し物は亡くし者。
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