西に傾いた陽は南に面した窓から姿を消した。光彩があたかも今この部屋にいる人々の心情を表すように昏く濁っている。
「日向ネジの遺骸を確認しました」
「そうか」
「滝隠れに程近い滝壺の岩場で爆発の跡と、ネジ上忍の忍具、腕の骨と思われる欠片に肉片、血痕も、大分薄くはなっていましたが、忍犬が臭いを確認いたしました」
「そうか」
「欠片だけでも発見できたのは幸運というべきでしょうか‥。
 彼は見事な最期を遂げました」
「そうか」
 机の上に広げられた麻布には黒こげて刃もかけ、錆びたクナイや千本の残骸と、黄ばんだ、肉片の欠片が渇いて付着している掌ほどの長さの半分に割れた骨がのっている。
 それに目を落としたまま、綱手は無感情にただ相槌を打っていた。
「‥どう、なされますか?」
 いうまでもなく、そこにあげられた数個の遺物。
「‥‥葬れ」
「は‥?」
 処理班の一人が他の者の内心を代弁したような声を出した。長の言葉が本来あるべき意味よりもはるかに無慈悲なものに聞こえたから。
「墓も別れの式もなく。たかだか骨の一欠片、捨ててしまったところで差し支えあるまい。
 消してしまえ」
 過去の存在ごと
「碑に‥名も‥」
「いらぬ」
 そのときにだけ彼らに向けられた目は怒りさえ湛えて。
 長の声は強く命じた。


 あの子は探しにいったのだ。